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高倉健さん死す② ああ、昭和がまた逝く!

 さまざまなところでさまざまに高倉健が語られる。どれも勘違いしている。人間に対する優しさとか心配りとかいうが、それだけじゃない。開き直った人間の一種の凄味である。怒らせたら何をしでかすか分からない、そんなやくざ者の怖さだ。後に俳優になった元安藤組の安藤昇組長にも共通する。

 頬に刀傷があるが目のきれいな俳優だった。

 そこが孤高に重なる。



 あれはね。あの時代の人間の臭いなんですよ。頑固で開き直っていて、本当のことをいうと、世の仕組みなど頭から何も信用していない、孤絶の闇なんです。



 日本は神国である。われらは天皇の赤子である。神風が吹く。日本は絶対に負けない。最後の一兵まで戦いぬく。なんて配属将校の顔色伺いながら吼えていた校長が、翌日には日本は破れました。明日から民主主義の国になります。なんちゃって、だものな。



 大人も権威も信用しない。不遜の少年を背負った男の顔なのよ。だから怖い。武骨で怖い。

 彼はいう。職もなく食うために俳優になりました。

 これで楽して儲かるかな。そうは甘くなかった。



 戸惑って、躊躇って生きた。

 でも人間は信じたい。信じられる人間に遭いたい。



 だから今風は苦手だ。現代人も肌にあわない。理屈も嫌いだ。中国では、映画の物語と同じように分かれたままになっている息子を思って、素人俳優の農夫が鼻水をたらして泣きだした。



 これはなんだ。

 演技なんてものじゃない。

 存在そのものだ。



 要するにプラスチック細工の偽物にはうんざりなのだ。そこが孤高にも孤独にもみえる。実際にそうだけど。でも彼が言うように、やくざ者ばかり演じてきました。一生懸命やれば誰かが認めるのですね。この世は。



 文化勲章をもらった時の科白である。



 なにもかも分かってきた。彼にも。嘘もホントも。だからいまは孤高も演じて見せる。そこをたけしには見抜かれた。ひと世代も違うたけしだが浅草のストリップ劇場で鍛えた眼力はたいしたものだ。



 「戦場のメリークリスマス」での、品のない上等兵どの以外見るべき作品もないたけしだが慧眼には違いなかった。さすが六区の孤独を知っている。



 でも、健さんの集中力はすごかったわ。ライトもカメラも回っているのに、芝居を忘れてしまう雰囲気だった。「動乱」で共演した吉永小百合の言葉である。



 どっちもホントだ。



 こんな輻輳した分裂気味の暗い男が、また一人この世を去った。昭和ってそんな男の時代だったのだ。



 たぶん。



 あれは時代の臭いでもあるな。うまいものを腹いっぱい食って、安運賃の飛行機を乗り継いで世界一周が出来る訳知りの若者とは違うのよ。



 頑固で世渡りが下手で、控えめで、お世辞の一つもいえないが、一回命を捨てた過去を持つ男のふてぶてしさだけはある。



 飾りじゃないのよ、人生は。

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夢亥(mugai)

猪突夢念

夢亥卓也

Author:夢亥卓也
1935年生まれ。満84歳。早生まれのため後の昭和ヒトケタ学年組。霧社事件の地、台湾・霧社で生まれ戦後日本へ引き揚げる。会社勤務、会社経営の後各種の疾病罹患を経て「死ぬ準備」「医療という名の踏んだり蹴ったり」「全労済の不払い」「若草物語暮色」「老病死工場の白い雲」「ぼっけもんの蒼い空」「芙美湖葬送」「哲学猫麻耶の哄笑」他を執筆開始。一部を当ブログ小説欄で発表。

夢見る猪は月に吼える。

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